結果発表

テーマ

つぶやき

選考委員:東 直子

最優秀賞
カタログギフト5万円分(1名)

作者名:楱名 様

作品
効き目よし母の涼しき言い回し
寸評
いつもまっすぐに心に刺さる言葉を届けてくれた「母」への敬意が伝わる。「涼しき言い回し」、言葉数は少なくてもすっきりとした表現だったのだろう。「よし」「涼しき」「言い回し」と「し」の音が繰り返し使われたことで清々しい韻律が生まれ、言葉の切れの良さを音の面からも際立たせている。

優秀賞
カタログギフト1万円分(3名)

作者名
田中 義展 様
作品
これだけは言うなと思っていたのになぁ
寸評
本音として思っていることでも、口に出したら関係が崩れてしまうことはある。ずっと言わないでおこうと思っていたのに、いつの日か、ぽろりと口からこぼれてしまった言葉への悔恨。どんな内容や言葉だったのかは分からないが、それだけに多くの人の「これだけ」に通じる普遍性がある。
作者名
土井 文子 様
作品
甘すぎた覚悟老後と云う荒野 
寸評
「老後」を「荒野」とした比喩が壮絶だが、リアルな感慨として胸に迫ってきた。老人として生きていく日々について十分に「覚悟」してきたはずなのに、「覚悟」という言葉では足りなかったのだ。現代を生きる上で誰にとっても切実な問題を、風景として提示した表現力がすばらしい。
作者名
山口 昌彦 様
作品
さざ波を立てて湯舟が愚痴を聞く
寸評
理不尽な思いをしたことを、一日の終わりの湯舟のなかで愚痴としてつぶやいた。湯舟が立てたさざ波を見て、自分の話に反応してくれたように感じたのだろう。「さざ波」という言葉に忸怩たる思いが込められているように思う。その「さざ波」を主体とした視線から描かれた構成も新鮮。

佳作
カタログギフト5千円分(5名)

       
  
作品
超がつく老々介護に蝶が舞う
寸評
「超」と「蝶」、駄洒落のようだが、超のつくほどの老々介護の不安定さが「蝶」のイメージと哀しく響きあう。
 
       
  
作品
忘れ物ないかと聞かれ解らない
寸評
結句の「解らない」は、忘れ物だけではなく、様々な物に対して確信が持てない不安な心理に通じ、悲しみが漂う。
 
       
  
作品
膝笑うここが私のターミナル
寸評
疲れて膝が笑い出したら引き返そうと思った。それを「私のターミナル」と表現した点が、たいへん粋。
 
       
  
作品
出口無い光求めて万歩計
寸評
万歩計で毎日の歩数を計っていることを「出口無い」と表現した。彷徨う人生を象徴化したようで奥深い。
 
       
  
作品
呟きがうねりとなって山動く
寸評
SNSでの「呟き」が、共感を得た人たちを通じて広がり、大きな組織や政治を変えることもある。現代の「山動く」。
 

特別賞
カタログギフト2万円分(2名)

       
  
作品
AIに冥土の行き方聞いてみる
寸評
AIが関与する割合が一気に増え、様々な仕事を肩代わりするようになってきた。そんな中、「冥土の行き方」の指南をAIに問うという切り口はとても新鮮。死生観という哲学にもAIが踏み込んでくるとしたら、なかなか怖い。
 
       
  
作品
怖かったそれでも私能登が好き
寸評
2024年の元旦に発生した能登の地震を体験したのだろう。地震は怖いけれど、能登という土地で暮らし続けてきた自分はやはり能登が好きなのだ。「私」の思いを率直に伝える、まっすぐな言葉が胸を打つ。
 

ありがとう賞
クオカード(100名)

ご応募いただいた中から抽選で
100名様にクオカード1,000円分をプレゼント

※賞品は11月頃より発送いたします。

※ありがとう賞の当選結果はクオカードの発送をもってかえさせていただきます。

過去の受賞作品のご紹介

2023年 受賞作品

テーマ

ぼやき

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
慢心を支えきれない土踏まず
作者
丸尾石 様
寸評
頭ではできるつもりになって、自分は有能だと驕り高ぶっても、足下がぐらついていては説得力がない。「支えきれない土踏まず」は、しっかりと地に足をつけておらず、軽薄であることの証のよう。誰かに対する皮肉にも読めるが、自分自身を客観的に見つめた戒めとして詠まれたのだろう。力強い文体に批評性が宿る。
優秀賞
作品
友の死を語り合える友あと一人
作者
黒川 豊千子 様
作品
花を見る我が世の端に腰かけて
作者
小篠 ミチ 様
作品
病癒え妻だけが飲む祝い酒
作者
庄村 照夫 様
特別賞
作品
会社辞めいつのまにやら友達いなく
作者
水野 豊 様
作品
片づけを終えたとたんにまた豪雨
作者
大西 茂和 様

2022年 受賞作品

テーマ

退職者川柳

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
生きているしるしか友の長電話
作者
小林 弘道 様
寸評
長電話ができるのもお互い退職して自由な時間がたっぷりあるから。それを「生きているしるし」とした表現がとてもすてきです。最近はほとんどの用事をメールやLINEなどのオンラインツールで済ますことが多いですが、電話で生きている肉体を使って声を交わしあうのもよいものだと再認識しました。
優秀賞
作品
会社から社会にかわり生きる日々
作者
健鬼 様
作品
『徘徊じゃないよ!』と散歩の背を伸ばし
作者
髙嶋 一誠 様
作品
父の日の手酌の酒をあふれさす
作者
宵待草 様
特別賞
作品
目がさめてリタイヤ気づき又眠る
作者
勝山 博行 様
作品
夢に見た自由時間を持てあます
作者
西田 力 様

2021年 受賞作品

テーマ

希望

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
寝たきりになるんじゃないぞ(ひ)孫が来る
作者
老人28号 様
寸評
コロナが無事に終息すれば、孫もひ孫も会いにきてくれる。もう一度楽しい時間を過ごせるように、会えない間に寝たきりにはならないように配偶者に呼びかけ、自分にも言い聞かせているのでしょう。勢いのある文体が精神的な喝としてエネルギーをくれるようで、しゃきっとなる一句です。
優秀賞
作品
野良猫も我が家にくればお姫様
作者
江原 明 様
作品
園児らの声の彼方に飛行機雲
作者
さくゆう子 様
作品
葉桜のこの道曲れば子が待てり
作者
やすみこ 様
特別賞
作品
マスク顔若く見られて自信湧く
作者
タイガーマスク 様
作品
逢えずとも同じ大空声ひびく
作者
増田 知子 様

2020年 受賞作品

テーマ

ぼやき

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
自粛せぬ庭の夏草のびのびと
作者
日向子 様
寸評
新型コロナウイルス感染拡大予防のために様々な活動の自粛を強いられた人間と、そんなことは全くおかまいなしの夏草を対比させた視点が新鮮でした。コロナに怯えることなく生き生きと命を謳歌している植物に対する敬意と共に、そろそろ庭の手入れをせねば、という溜息が一体化していることも巧みです。
優秀賞
作品
おめでとう言われ寂しい歳となり
作者
井上 郁子 様
作品
何しよう明日こそは何しよう
作者
お~いお酒 様
作品
年とって出てくる腹のたくましさ
作者
ひでさん 様
特別賞
作品
そのマスク俺の大事なシャツの柄
作者
児柳 様
作品
タバコより身体に悪い嫁の声
作者
嫁に弱き夫 様