結果発表

テーマ

ぼやき

選考委員:東 直子

最優秀賞
カタログギフト5万円分(1名)

作者名:丸尾石 様

作品
慢心を支えきれない土踏まず
都道府県
山梨県
寸評
頭ではできるつもりになって、自分は有能だと驕り高ぶっても、足下がぐらついていては説得力がない。「支えきれない土踏まず」は、しっかりと地に足をつけておらず、軽薄であることの証のよう。誰かに対する皮肉にも読めるが、自分自身を客観的に見つめた戒めとして詠まれたのだろう。力強い文体に批評性が宿る。

優秀賞
カタログギフト1万円分(3名)

作者名
黒川 豊千子 様
作品
友の死を語り合える友あと一人
都道府県
愛媛県
寸評
年を重ねていくうちに、親しい友が次々に亡くなってしまう。ついに「あと一人」に。残された者の淋しさや状況がリアルに迫ってくる。友達とは「語り合える」ことが醍醐味である。この世に残って、彼岸に行ってしまった友達のことを語り合う、そのこと自体のかけがえのなさに気付かせてくれる。
作者名
小篠 ミチ 様
作品
花を見る我が世の端に腰かけて
都道府県
新潟県
寸評
時がくれば可憐に開く花を見る自分の位置を「わが世の端」とした。カメラがぐっと引いて、花を眺めている自分の全体像を捉えたかのよう。奥ゆかしいともいえる内容だが、世界の片隅でそっと楽しみを噛みしめられることの喜びも伝わる。「腰かけて」と言いさしの形で終わっていて、余韻が残る。
作者名
庄村 照夫 様
作品
病癒え妻だけが飲む祝い酒
都道府県
長野県
寸評
自分の病が癒えたことを祝って「祝い酒」を飲んだ。ただし、病み上がりでまだ自分はお酒を飲むことができない。しかし妻は元気でお酒が飲めるので、身代わりのように「祝い酒」を飲んだ。うれしさとうらやましさと。信頼関係があるからこそ、こんな形のお祝いの会もほのぼのと楽しめたのだろう。

佳作
カタログギフト5千円分(5名)

       
  
作品
今日もまた淋しくないと独り言
都道府県
茨城県
寸評
「淋しくない」と自分に言い聞かせているのですね。しかしわざわざ言い聞かせなければならないほど淋しさは強いのだ。
 
       
  
作品
嫁ぎ先馴染んで娘遠くなり
都道府県
千葉県
寸評
実家との連絡が淡くなるのは、嫁ぎ先に馴染んできた証拠で、歓迎すべきと思いつつも淋しい気持ちは増してくる。
 
       
  
作品
先生も生徒もいない高齢者
都道府県
新潟県
寸評
教えられたり、教えたりする間柄があるということが、社会と接触していることであるのかもしれない。気付きのある一句。
 
       
  
作品
補聴器を付けても会話すれ違い
都道府県
千葉県
寸評
補聴器で言葉が聞き取りやすくなったものの、内容が噛み合わず。淡々とした言葉の背後からおかしみと切なさが滲む。
 
       
  
作品
ポケットに賞味期限の夢ばかり
都道府県
青森県
寸評
いつかやりたいと思いつつ実現できないまま月日が過ぎ、もうかなえられないかもしれない。「賞味期限」という語が絶妙。
 

特別賞
カタログギフト2万円分(2名)

       
  
作品
会社辞めいつのまにやら友達いなく
都道府県
東京都
寸評
毎日の通勤から開放されてやれやれと思う一方、毎日顔を合わせて気軽に会話をする相手がいないことに少ししてから気付いた。「いつのまにやら」がリアル。
 
       
  
作品
片づけを終えたとたんにまた豪雨
都道府県
神奈川県
寸評
異常気象による豪雨で被害を被ったのでしょう。たいへんな思いをして片づけたのに、また豪雨がやってきた。運命の皮肉に、大きなため息が聞こえてくるようです。
 

ありがとう賞
クオカード(100名)

ご応募いただいた中から抽選で
100名様にクオカード1,000円分をプレゼント

※賞品は11月頃より発送いたします。

※ありがとう賞の当選結果はクオカードの発送をもってかえさせていただきます。

過去の受賞作品のご紹介

2022年 受賞作品

テーマ

退職者川柳

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
生きているしるしか友の長電話
作者
小林 弘道 様
寸評
長電話ができるのもお互い退職して自由な時間がたっぷりあるから。それを「生きているしるし」とした表現がとてもすてきです。最近はほとんどの用事をメールやLINEなどのオンラインツールで済ますことが多いですが、電話で生きている肉体を使って声を交わしあうのもよいものだと再認識しました。
優秀賞
作品
会社から社会にかわり生きる日々
作者
健鬼 様
作品
『徘徊じゃないよ!』と散歩の背を伸ばし
作者
髙嶋 一誠 様
作品
父の日の手酌の酒をあふれさす
作者
宵待草 様
特別賞
作品
目がさめてリタイヤ気づき又眠る
作者
勝山 博行 様
作品
夢に見た自由時間を持てあます
作者
西田 力 様

2021年 受賞作品

テーマ

希望

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
寝たきりになるんじゃないぞ(ひ)孫が来る
作者
老人28号 様
寸評
コロナが無事に終息すれば、孫もひ孫も会いにきてくれる。もう一度楽しい時間を過ごせるように、会えない間に寝たきりにはならないように配偶者に呼びかけ、自分にも言い聞かせているのでしょう。勢いのある文体が精神的な喝としてエネルギーをくれるようで、しゃきっとなる一句です。
優秀賞
作品
野良猫も我が家にくればお姫様
作者
江原 明 様
作品
園児らの声の彼方に飛行機雲
作者
さくゆう子 様
作品
葉桜のこの道曲れば子が待てり
作者
やすみこ 様
特別賞
作品
マスク顔若く見られて自信湧く
作者
タイガーマスク 様
作品
逢えずとも同じ大空声ひびく
作者
増田 知子 様

2020年 受賞作品

テーマ

ぼやき

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
自粛せぬ庭の夏草のびのびと
作者
日向子 様
寸評
新型コロナウイルス感染拡大予防のために様々な活動の自粛を強いられた人間と、そんなことは全くおかまいなしの夏草を対比させた視点が新鮮でした。コロナに怯えることなく生き生きと命を謳歌している植物に対する敬意と共に、そろそろ庭の手入れをせねば、という溜息が一体化していることも巧みです。
優秀賞
作品
おめでとう言われ寂しい歳となり
作者
井上 郁子 様
作品
何しよう明日こそは何しよう
作者
お~いお酒 様
作品
年とって出てくる腹のたくましさ
作者
ひでさん 様
特別賞
作品
そのマスク俺の大事なシャツの柄
作者
児柳 様
作品
タバコより身体に悪い嫁の声
作者
嫁に弱き夫 様

2019年 受賞作品

テーマ

喜怒哀楽

選考委員:東 直子

最優秀賞
作品
合いカギをもらってからがむずかしい
作者
窪田 達 様
寸評
「合いカギ」をもらうということは、自由に出入りしていいよ、という許しを貰ったということ。とはいえ、まだ正式に一緒に住むと決まったわけではないのでしょう。恋人、友達、親子など、関係はいろいろ考えられますが、使い方次第では、関係を悪くしてしまう可能性もあります。まさに「むずかしい」!微妙な心理を突いています。
優秀賞
作品
単純にすぐ「嬉しい」を言う私
作者
靖子 様
作品
赤ちゃんを洗ったお湯が嬉しそう
作者
渡辺 愽 様
作品
退職のイスに曖昧置いてくる
作者
赤本 広子 様
特別賞
作品
鏡から今日の元気を覗き見る
作者
山村 3千子 様
作品
待ち受けの孫をほめあうババふたり
作者
荒二井 小枝子 様